連結会計を理解する上で欠かせない用語のひとつが「未実現利益」です。
未実現利益とは、連結グループ内で発生した利益のうち、まだ実現していない部分を指します。初心者にとってはやや難しい概念ですが、具体例や仕訳を用いるとイメージしやすくなります。
この記事では、未実現利益の基本から、連結会計での消去方法まで丁寧に解説します。
未実現利益とは?
未実現利益とは、連結グループ内の取引によって発生した利益のうち、期末時点でまだ「実現」していないものを指します。
ここでいう「実現」とは、グループ外部の第三者との取引が成立し、利益が確定することを意味します。
例えば、親会社が子会社に商品を販売した場合、まだ外部に販売されていない商品には未実現利益が含まれます。この利益は連結財務諸表上で調整が必要です。
連結会計での未実現利益の消去とは?
連結会計では、グループ内部の取引はすべて相殺する必要があります。
未実現利益の消去とは、内部取引で発生した利益のうち、期末時点で未実現の利益を帳簿から取り除く処理のことです。
消去の必要性
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必要な場合:内部取引で利益が発生しており、期末に未実現の状態で残っている場合。
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不要な場合:利益が発生していない、または未実現利益の金額が少額で重要性が乏しい場合。
親子会社間の未実現利益の負担関係
未実現利益は、売り手側が負担するのが基本です。
売り手が親会社か子会社かによって処理が異なり、会計上はダウンストリームとアップストリームの区別が重要です。
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ダウンストリーム:親会社 → 子会社
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アップストリーム:子会社 → 親会社
アップストリームの場合は、非支配株主に利益負担が発生するケースもあります。
棚卸資産の未実現利益の消去
ダウンストリームの例
親会社P社が子会社S社に1,000円で仕入れた商品を1,200円で販売し、期末にS社が保有している場合。
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売上高・売上原価を相殺
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商品に含まれる200円の未実現利益を消去
仕訳例:
アップストリームの例
子会社S社が親会社P社に商品を販売し、期末にP社が保有している場合。非支配株主が関与する場合は、利益負担の仕訳も必要です。
固定資産の未実現利益の消去
ダウンストリームの例
親会社P社が子会社S社に土地を100万円で購入し、120万円で販売。S社が期末に保有。
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土地売却益20万円と土地に含まれる未実現利益20万円を消去
仕訳例:
アップストリームの例
子会社S社が親会社P社に土地を販売し、P社が期末に保有。非支配株主への負担仕訳も加えて調整します。
まとめ
未実現利益とは、連結会計において内部取引から生じた利益で、まだ外部取引で実現していない部分のことを指します。
連結財務諸表を正しく作成するには、この未実現利益を適切に消去することが重要です。
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ダウンストリーム・アップストリームの区別がポイント
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棚卸資産や固定資産など、資産ごとに消去仕訳を行う
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非支配株主への影響も考慮する必要がある
未実現利益の仕組みを理解することで、連結会計の全体像がよりクリアになります。
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