源泉徴収とは

源泉徴収とは?仕組み・対象・フリーランス向け注意点を徹底解説

「源泉徴収(げんせんちょうしゅう)」と聞くと、給与から天引きされる所得税のことを思い浮かべる方が多いでしょう。
しかし実際には、給与以外の報酬にも源泉徴収がかかるケースがあります。特にフリーランスや個人事業主にとっては、源泉徴収のしくみを正しく理解しておくことが税務上とても重要です。

この記事では、源泉徴収の基本から、計算方法、フリーランスが注意すべき点までをわかりやすく解説します。

源泉徴収とは?その目的と仕組み

源泉徴収とは、給与・報酬を支払う側(会社や報酬支払者)が、支払額からあらかじめ所得税などを差し引き、受け取る側に代わって税務署に納付する制度です。
つまり、所得税を「前払い」するような仕組みで、国としては税金の徴収を効率化できるメリットがあります。

給与所得者の場合、毎月の給料から差し引かれる「所得税+復興特別所得税」がこの源泉徴収です。
そして年末調整や確定申告を通じて、年間の所得と控除をもとに最終的な税額を確定し、差額を調整します。

源泉徴収の対象となる所得・報酬

源泉徴収が適用される所得・報酬には、主に次のようなものがあります。

区分 対象例
給与所得 給料、賃金、賞与、手当など(課税対象)
報酬・料金 原稿料・講演料など、専門職に支払う報酬等
利子・配当 銀行利子や法人配当など
退職金 退職手当等(支払われる際の計算方法に源泉税が関わる)

特に、個人事業主やフリーランスが受け取る報酬の一部は、報酬支払者が源泉徴収義務者として税を差し引くことが法律で定められています。

源泉徴収税額の計算方法

源泉徴収税額は、所得の種類によって計算方法が変わります。主なものを以下に示します。

1. 給与所得の源泉徴収

給与所得者の源泉徴収額は、国税庁が公表する「源泉徴収税額表」に従って計算します。
計算にあたっては、次のようなステップを踏みます。

  1. 総支給額から社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険等)を差し引く

  2. 残った金額をもとに、扶養親族の数に応じた税額表を参照

  3. 所定の税額が源泉徴収税額として決定される

たとえば、社会保険料控除後の給与が月額27万円、扶養親族が1人の場合、その欄の税額を読み取って差し引く、という流れです。

2. 報酬(フリーランス向け)の源泉徴収

報酬等(たとえば原稿料・講演料など)に対する源泉徴収税額は、原則「支払金額 × 10.21%」で計算されます。
ただし、1回に支払われる金額が100万円を超える場合、その超過部分には「20.42%」の税率が適用される場合があります。

例:

  • 支払額 10万円 → 源泉徴収税額 = 10万円 × 10.21% = 10,210円

  • 支払額 200万円 → 源泉徴収税額 = (200万円 − 100万円) × 20.42% + 102,100円 = 306,300円

また、これには 復興特別所得税 が含まれて計算される点も注意が必要です。

フリーランス・個人事業主にとっての注意点

フリーランスや個人事業主として源泉徴収が発生する場合、以下の点に注意してください。

  1. 確定申告を必ず行うこと
     源泉徴収はあくまで前払いであり、1年後に確定申告で所得や控除を調整します。払いすぎた税金は還付されます。

  2. 請求書の記載に注意
     請求書に報酬と消費税を分けて記載する場合、源泉徴収対象となるのは「報酬本体額」であり、消費税は対象外となります。

  3. 源泉徴収義務者の特例
     支払側が小規模の場合(たとえば家事使用人の給与や自分自身で事業を行っている個人など)、源泉徴収義務が免除される例もあります。

  4. 納付期限を守ること
     源泉徴収された税金を納付する義務は、給与などを支払った翌月10日まで(通常義務者の場合)。期限を過ぎると延滞税が発生する可能性があります。

 

源泉徴収票とその見方

源泉徴収票とは、1年間の支払金額、源泉徴収された所得税、社会保険料、控除額などが記載された書類です。
従業員や報酬を受ける人に発行され、確定申告や年末調整で提出・参照される重要な証明書類です。

主な記載項目には次のようなものがあります:

  • 支払金額:1年間の給与・賞与合計

  • 給与所得控除後の金額

  • 各種所得控除の合計額

  • 源泉徴収税額:1年間に差し引かれた所得税・復興特別所得税

年末調整後、通常 12月~1月 頃に会社から発行されます。退職時などは翌月中に発行される場合が多いです。

まとめ

源泉徴収とは、支払者が所得税を前もって差し引いて納付する制度です。給与所得者だけでなく、フリーランスや個人事業主の報酬にも適用される点を理解しておくことが大切です。
計算方法、納付タイミング、請求書の書き方、確定申告との関係など、注意すべきポイントを押さえておけば、税務リスクを抑えながら安心して事業を続けることができます。

さらに参照してください:

欠損金とは?法人税で使える繰越控除の仕組みと注意点を徹底解説