企業の財務を理解するうえで欠かせない概念が「自己資本」と「他人資本」です。似た言葉に感じますが、企業の安全性や経営方針を判断するための重要な指標になります。この記事では、初心者にもわかりやすく、企業会計の専門家の視点から両者の違いと財務分析への活かし方を整理して解説します。
読み終える頃には、貸借対照表(バランスシート)の見え方がぐっとクリアになりますよ。
自己資本とは
自己資本とは「返済義務のない資金」のことです。会社を支える“自前の力”とも言え、返済や利子の負担がないため、企業の財務的な安定性に大きく寄与します。
貸借対照表の「純資産の部」がこれに該当し、主に次の要素で構成されます。
・資本金
・資本剰余金(株主から集めた資金のうち資本金にならなかった部分)
・利益剰余金(事業で稼いだ利益の蓄積)
利益を出して積み上げるか、新たに増資をして資本を集めることで自己資本は増加します。
企業が安定的に利益を出していれば自然と自己資本は厚くなり、財務基盤が強まっていきます。
他人資本とは
他人資本とは「返済義務のある資金」です。貸借対照表では「負債の部」として表示されます。
・借入金
・買掛金
・未払金
・社債
・支払手形
などが代表例です。
このうち、金融機関などから借り入れる借入金や、投資家から資金調達する社債は返済義務があり、利息支払も必要になります。そのため、他人資本の割合が多くなるほど返済負担が増え、財務リスクも高まります。
自己資本と他人資本の違い
まとめると、2つの根本的な違いは次のとおりです。
・返済義務があるかないか
・企業の安定性にどう影響するか
自己資本は返済不要で安定性を高めますが、他人資本は返済負担が増える可能性があり、財務リスクに直結します。
そのため、企業が健全な経営を目指すなら「自己資本を増やす」「過度に負債に依存しない」ことが重要になります。
自己資本を使った財務分析の基本
自己資本を理解したら、次は財務分析です。企業の状態を読み取るための代表的な指標を2つ紹介します。
1. 自己資本比率
自己資本比率とは、総資本のうちどれだけ自己資本でまかなわれているかを示す指標です。
計算式は次の通りです。
自己資本比率 = 自己資本 ÷(負債+自己資本)×100
一般的に
・20%未満:財務基盤が弱い
・40%〜50%:比較的安定
が目安と言われます(業種により異なる)。
自己資本比率が高いほど、負債に依存していない安全な経営と言えます。
2. 自己資本利益率(ROE)
ROEは、自己資本をどれだけ効率よく利益に変えているかを示す指標です。
自己資本利益率(ROE)= 当期純利益 ÷ 自己資本
ROEが高い企業は、株主から集めた資本を上手に使って利益を生み出せていることになります。投資家が重視する理由もここにあります。
自己資本を把握することが正しい経営判断の第一歩
自己資本がどのくらいあるか、負債がどれだけ占めるか。このバランスを理解することで、企業の危険度や将来性が見えてきます。
・負債に偏りすぎていないか
・自己資本比率は業界平均と比べてどうか
・ROEは効率的に利益を生み出せているか
こうした点を定期的にチェックすることで、企業は健全な経営判断ができます。
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