退職給付会計(たいしょくきゅうふかいけい)とは、企業が従業員に退職時に支払う退職金や企業年金に関する会計処理のことです。
特に、あらかじめ給付額(退職金や年金額)を決めておき、必要に応じて後から拠出額を調整する制度に適用されます。
退職給付会計が必要な理由
退職金や企業年金は、将来の従業員への支払い義務(債務)です。
そのため、企業は**「今後支払う予定の退職給付」**を見積もり、毎年の会計に反映させる必要があります。
例えば、定年退職が10年後の社員に対しても、その人が働いている間に少しずつ退職給付の費用を計上します。
これにより、退職金支払いの負担を特定の年度に集中させず、企業の財務状況を正しく反映できます。
代表的な制度の例
退職給付会計が使われるのは、主に**「確定給付型」**の制度です。
確定給付型(DB:Defined Benefit)
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給付額をあらかじめ決定(例:勤続年数×一定額)
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将来必要な支払い額を見積もって、会計処理で積み立てる
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市場環境や運用状況により、企業が追加で拠出する必要がある
一方、**「確定拠出型(DC)」**は、毎年の拠出額があらかじめ決まっており、将来の給付額は運用成果次第のため、退職給付会計の対象外です。
会計上のポイント
退職給付会計では、以下のような要素を計算・記録します。
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退職給付債務
将来の退職給付支払額の現時点での見積もり。 -
年金資産
退職給付のために積み立て、運用している資産。 -
数理計算差異
見積もりと実績の差(例:運用利回りの変動)を調整。
具体例でイメージ
例:A社では、社員Bさん(勤続20年)が定年時に2,000万円の退職金を受け取る予定です。
Bさんがあと10年勤務する場合、A社は毎年200万円ずつ費用計上し、同時に資産を積み立てます。
これにより、定年の年に一度に2,000万円を支払うための財務負担を平準化できます。
まとめ
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退職給付会計は、企業の退職金や年金支払いの会計処理ルール
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主に確定給付型制度で使われる
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将来の支払いを見積もって、毎年少しずつ費用計上することで財務の安定性を保つ
企業の財務諸表を読む際、この会計処理を理解しておくと、将来の負債や資産の健全性を判断しやすくなります。
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