企業グループ全体の経営状況を正確に把握するためには、親会社だけでなく子会社や関連会社の情報も含めた「連結決算」が欠かせません。
連結決算を行うことで、企業グループ全体の財政状態や経営成績、キャッシュフローをひとつの視点で確認できます。
この記事では、連結決算の基本から連結財務諸表の作成手順、連結修正のポイントまで丁寧に解説します。
連結決算とは
連結決算とは、親会社とその子会社、場合によっては関連会社を含めた企業グループ全体をひとつの組織として財務諸表を作成する決算のことです。
通常の個別決算では親会社単体の財務状況しかわかりませんが、連結決算ではグループ全体での正確な業績や財務状況を把握できます。
このとき作成されるのが「連結財務諸表」で、個別財務諸表を単に合算するだけではなく、内部取引の相殺や未実現利益の消去などの「連結修正」が必要です。
連結決算の対象はどこまで?
連結決算の対象となるのは、基本的に以下の条件を満たす子会社です。
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親会社が議決権の50%超を保有している
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議決権40~50%で、同意者や緊密者と共同で支配力を持つ場合
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議決権0~40%でも特定条件(役員関係など)を満たす場合
さらに、重要性の高い子会社のみを連結対象とします。重要性は量的基準(売上高・資産規模など)と質的基準(経営への影響度など)で判断されます。
連結財務諸表とは
連結財務諸表は、グループ全体をひとつの会社と見なして作成されます。主な種類は次の通りです。
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連結貸借対照表(B/S)
グループ全体の資産・負債・純資産をまとめ、内部取引や投資を相殺消去して作成します。 -
連結損益計算書(P/L)
親会社と子会社の収益・費用を合算し、内部取引や未実現利益を除外して全体の利益を把握します。 -
連結キャッシュフロー計算書
営業活動・投資活動・財務活動ごとのキャッシュフローをグループ全体で表示します。 -
連結株主資本等変動計算書
純資産の変動を事由ごとに明示し、親会社株主に関する資本の動きを分かりやすく報告します。
連結決算の手順
連結決算は以下の手順で進めます。
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個別財務諸表の作成
親会社・子会社それぞれで通常の決算を行い、財務諸表を作成します。会計方針を統一することが重要です。 -
個別財務諸表の合算
親会社は子会社から財務諸表を入手し、合算します。 -
連結パッケージの入手
連結修正に必要な情報(親子間取引、未販売在庫など)を含むデータを受け取ります。 -
連結修正の実施
親子間取引の相殺、未実現利益の消去などを行います。 -
連結財務諸表の作成
修正後に連結貸借対照表・連結損益計算書などを作成します。
連結修正のポイント
1. 親子間取引の相殺
親会社と子会社の間で行われた売上や仕入を相殺します。
例:親会社→子会社への売上1,000円は、子会社の仕入1,000円と相殺。仕訳は以下の通りです。
これにより、利益への影響はなく、グループ全体の正しい損益が把握できます。
2. 未実現損益の消去
期末において内部に残る在庫や仕掛品に含まれる利益を消去します。
例:子会社に残る在庫500円のうち、親会社が上乗せした利益100円を除外。
これにより、財務諸表上で未実現利益を計上せず、正確なグループ利益を表示できます。
連結決算の注意点
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親子間取引や内部在庫の管理が不十分だと、連結修正に手間がかかります。
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日常から情報共有や子会社への指導を行い、スムーズな連結決算を意識することが大切です。
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会計方針を統一しないと、正しい連結財務諸表を作れません。
まとめ
連結決算は、企業グループ全体の経営状況を正確に把握するための重要な手続きです。個別財務諸表の合算だけでなく、親子間取引の相殺や未実現損益の消去といった連結修正を行うことで、信頼性の高い連結財務諸表が作成できます。
日常的なデータ管理や子会社への連結パッケージ作成指導を行うことで、連結決算の作業負担を大幅に軽減できます。
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