金融商品会計基準とは

金融商品会計基準とは?内容・範囲・会計処理をわかりやすく解説

金融商品会計基準は、現金預金や有価証券、デリバティブ取引などの「金融商品」に関する会計処理を定めた基準です。
企業の財務諸表において、金融資産や金融負債を正しく認識・評価するために欠かせない基礎知識となります。
この記事では、金融商品会計基準の概要から、金融商品の範囲、会計処理の基本まで、初心者にもわかりやすく解説します。

金融商品会計基準の概要

金融商品会計基準(正式名称:金融商品に関する会計基準)は、1999年に企業会計審議会によって公表された会計基準です。
企業が保有・取引する金融資産や金融負債について、どの時点で認識し、どのように評価・表示するかを定めています。

主な目的は、金融商品のリスクや時価変動を財務諸表に正しく反映させ、企業の実態をより正確に示すことにあります。
この基準は「企業会計原則」をベースとしつつ、金融商品に関してはより詳細で実務的な規定が設けられています。

金融商品の範囲

金融商品会計基準で扱われる金融商品は、以下の3つに分類されます。

① 金融資産

現金、預金、売掛金などの金銭債権や、有価証券(株式・債券など)が該当します。
将来、現金などの経済的利益を受け取る権利をもつものが金融資産とされます。
なお、棚卸資産や固定資産のように販売・償却を目的とするものは金融資産には含まれません。

② 金融負債

買掛金や借入金、社債など、将来金銭を支払う義務のあるものが金融負債です。
また、債務保証契約のように将来支払い義務が発生する可能性がある契約も含まれます。

③ デリバティブ取引

デリバティブ取引とは、金融商品から派生した取引を指し、以下のようなものが含まれます。

  • 先物取引

  • オプション取引

  • スワップ取引

  • 為替予約

これらは将来の価格変動リスクをヘッジする目的で利用されるケースが多く、時価評価の対象となります。

金融資産・金融負債の認識と消滅

発生の認識

金融資産・金融負債は、**契約が成立した時点(約定日)**で会計上認識します。
売掛金や買掛金のように取引から生じる場合は、対価の受け渡し日を基準に認識します。

金融資産の消滅

金融資産が消滅したと認められるのは、

  • 資産の権利が譲渡され、

  • 将来の買い戻し義務がなく、

  • 譲渡先が法的にその権利を保有している場合
    のすべてを満たしたときです。

金融負債の消滅

金融負債は、債務を弁済した場合、債務免除を受けた場合、または他者が債務を引き受けた場合に消滅します。

金融資産および金融負債の会計処理

債権

受取手形や売掛金などは、貸倒引当金を控除した金額で貸借対照表に表示します。
公社債などの債権は、取得価額で評価するのが原則ですが、金利調整分がある場合は「償却原価法」を用いて表示します。

有価証券

保有目的によって会計処理が異なります。

区分 内容 評価方法
売買目的有価証券 時価変動で利益を得る目的のもの 時価評価(評価損益をP/L計上)
満期保有目的債権 償還まで保有する予定の公社債など 償却原価法
関係会社株式 子会社・関連会社の株式など 取得原価
その他有価証券 上記以外の株式など 時価評価(評価差額を純資産の部で処理)

なお、著しい価値の下落がある場合は、損失として認識し、貸借対照表に反映する必要があります。

デリバティブ取引

原則として時価で評価し、その評価損益を当期の損益として計上します。
ただし、ヘッジ会計を適用する場合は、リスク回避の効果を考慮して損益を繰り延べる処理が行われます。

金銭債務

支払手形や借入金などは、確定している債務額を貸借対照表に表示します。
社債の場合は、金利調整を考慮し、償却原価法を用いて評価します。

貸倒引当金の設定方法

債権の回収不能リスクを見積もるため、債権を以下の3つに区分して貸倒引当金を計上します。

区分 内容 貸倒見積高の算定方法
一般債権 通常の取引先に対する債権 過去の実績率に基づき算定
貸倒懸念債権 財務状況が悪化している債権 個別に回収可能額を見積もる
破産更生債権等 法的整理手続き中の債権 回収可能額を見積もり、残額を全額引当

このように区分して評価することで、貸倒リスクを適正に反映することができます。

まとめ:金融商品会計基準は「金融取引の見える化」を支える基盤

金融商品会計基準は、金融資産や負債の発生・評価・消滅を明確にすることで、企業の財務状況を正確に示すための重要な枠組みです。
実務では、保有目的や契約内容によって会計処理が異なるため、個々の取引の性質をよく理解することが求められます。
金融商品を扱う経理担当者にとって、会計基準の正確な理解はリスク管理と信頼性の高い財務報告の第一歩といえるでしょう。

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